「祈りの道 気仙三十三観音霊場」再興プロジェクト実施 【ひとさじの会】

活動趣旨

*本活動計画はひとさじの会の平成24年度総会(2012/06/21 於伝通院)において起案したものです。その後、着々と活動は進行中です。最新の情報は「活動報告」および「ブログ」をご覧ください。

 

 ひとさじの会は、東日本大震災から、避難所や仮設住宅において、炊き出しや子ども会等の支援にたずさわってきた。しかし、それらの支援は、被災地の方々の立場で考えると、どれも一時しのぎのものでしかないと振りかえらざるをえない。その活動のなかから、心静かに手を合わせ、ほっとできるところがほしいとの声が聞こえてきた。それは、もともと日常の中に溶け込んでいた、祈りを捧げる場を求めている声なのではないかと直感した。

 

 大震災で甚大な被害を受けた岩手県・気仙地域では、もともと気仙三十三観音霊場の巡礼が行われており、地元の人に親しまれてきた。昔から当たり前のようにそこにあった観音堂の存在は、家族の安寧を祈る場であり、亡くなった方に祈りを捧げる場でもあり、地域の方々の交流の場でもあった。また、たとえ少しの間、地域を離れていたとしても、大切な方の思い出を語りあう場となり得るものでもあろう。観音堂は地元の方の心のよりどころといってよい。

 

 観音霊場の中には、津波によって堂宇・伽藍に壊滅的な被害を受けてしまったところ、管理者の住まいが被災されたところもあり、被害の程度はさまざまである。ひとさじの会では、岩手県気仙地域にかかわる行政、またNPOなど諸団体と連携して、気仙三十三観音霊場を再興し、被災地域に住む方々のよりどころとなる「祈りの道」を再興したいと考えている。加えて、全国の人々にお参りいただき、地域の活性化に寄与できればと考えている。再興には幾年もの時がかかるであろう。ひとさじの会は、地元気仙地域の方々の想いにそったかたちで「祈りの道」の再興を進めていきたい。

 

霊場の現状調査

 ひとさじの会では、2012年3月10日から14日及び4月17日から18日、6月19日から21日までの3度、現状調査のため各霊場を訪れた。三十三霊場のすべてをお参りすることができた。

  被災状況としては、①お堂、観音像、管理者の住居が被災したところ…要害観音堂、立山観音堂、②お堂・管理者の住居が被災したところ…金剛寺、浄土寺、③ お堂が被災したところ…坂口観音堂、④管理者の住居が被災したところ…羽縄観音堂、熊野神社熊野堂、田端観音堂であった。

 また、麟祥寺、三日市公民館において、地元に伝わる伝承念仏を学ぶ機会を得ることができた。ゆくゆくは、次世代にお念仏を伝える機会を持ちたいと思う。

以後、各観音堂管理者にお話しを聞いた上で、どのような形で支援ができるか検討し、実行に移していきたい。

 

活動内容

「祈りの道 気仙三十三観音霊場」再興プロジェクトの活動内容には、大きく、 


  ①気仙地域の方々にとってのよりどころの再興―地縁の象徴の再生―  

  ②観光や地元産業に結びつけて、地域の復興に寄与する―地域の産業の再生―  


という二つのカテゴリーがある。ひとさじの会では、まず、早急に取り組むべき課題である、①気仙地域の方々にとってのよりどころの再興にかかわる事業から活動を始めるべきであると考える。以下、活動の内容・留意点について記す。  

  

(1)気仙三十三観音霊場マップの発行  

  調査の中で、三十三観音霊場が地元に深く浸透しているかというと必ずしもそうではないとのお話しを伺った。よって、まず霊場の存在を広くお伝えし、より多くの方々にお参りいただくことが重要ではないかと考えた。ゆくゆくは、地元の産業と絡めたマップ作成が必要であると思うが、まずは、陸前高田市観光物産協会が発行した「気仙三十三観音祈りの道探訪」マップに被災後の状況を書き加えたものを再発行するところから始めたい。実施への手続きとして、陸前高田市観光物産協会が所有する版権の使用許可、経費の見積もり、配布場所(仮設住宅集会所、道の駅など)、広報の方法を調査、検討すべきである。  

  

(2)気仙三十三観音霊場HPの作成  

 現在、インターネット上で、気仙三十三観音の各霊場にかかわる情報は、住所等については検索できるものの、詳細を記すものはない。そこで、気仙三十三観音霊場HPを作成したい。HPの記事について、すべてを書き下ろすのには、多大な労力を必要とし、時間がかかってしまう。そこで、既出の情報をできるだけ利用する方向で作成したい。マップについては、前述「気仙三十三観音祈りの道探訪」を、各霊場の紹介については、共和印刷企画センター発行『気仙三十三観音 郷土けせんを記録にとどめる写真集』を利用したい。ついては、上記の本の版権所有者を探し了解をとる必要がある。  

  

(3)各霊場の朱印作成  

  調査において、朱印を置いてある霊場はごくわずかであることを確認した。しかし、霊場の護持に納経料は欠かせないものである。ちなみに、延命寺、常膳寺には朱印を押した紙が置いてあり200円とあった。以後の課題としては、どのような印を作るのか(本尊種子の朱印、筆書きの部分の印、寺院名が記される角印、札所の番号の印)、印の置き場所(お堂に置く、管理者のもとに置く)、納経料を管理者が直接受け取るのか、賽銭箱に入れるのか、講中で観音堂を管理する場合、誰が納経料を管理するのかなど、それぞれの霊場の状況に適した方策を考える必要がある。



(4)気仙三十三観音霊場ガイド本の出版

気仙三十三観音霊場があるていど認知された後、観音霊場のガイドを出版したい。できれば各地の霊場ガイドのシリーズの一冊に組み入れたい。一定の売り上げが見込めれば、出版社は、ライターに原稿を依頼し短期間で出版できると思われる。ただし、一定数の買い取りを前提として出版を約す場合が多い。


(5)道標の整備

 現在、国道・県道から各観音霊場に行くに当たっての道標がまったく無い。寺院が霊場である場合はまだたどり着きやすいが、一般民家の中に観音堂がある場合など、すんなりたどり着くことはなかなか困難である。よって、国道、県道から霊場までの道標を整備する必要がある。ただし、石柱を建てるにしろ木製の道標を立てるにしろ、行政との打ち合わせが必要となる。道標設置場所の検討、道標の数、資金の手当など実現までクリアーすべき点は多い。


(6)徒歩巡礼道の整備

 以前は、気仙三十三観音霊場は3泊4日ないし4泊5日で歩かれたという。健康ブームの今、徒歩巡礼道を整備する意義はあるのではないか。道標整備には、四国の遍路道保存協会で行われている、ワッペンをガードレールなどに張って目印とする、また、要所に木製の道標を置くという方法をとれば、あまり資金をかけずに整備できるのではないか。まず、大船渡歩こう会の協力を得て三十三の霊場を数度に分けて歩いてみたい。実行するに当たってトイレの場所の確認が重要である。


(7)被災された霊場への支援

 観音堂や観音像が被災してしまった霊場を中心に、再興にむけての資金的な援助を行う。観音堂再興には、地元気仙大工の匠に力を借りたい。最近、お堂を再建した馬頭観音堂や向堂観音堂などの再建計画を知ることは参考になる。観音堂が津波の被害にあった、要害観音堂、立山観音堂については、家とともに観音堂再建のご意志を持っていらっしゃることを確認した。ただし、いまだ再建場所も決まっておらず、まだ時間がかかることが予想される。坂口観音堂については、管理されている光照寺が境内地にお堂を再建する計画が始動した。


(8)気仙三十三観音霊場復興のための募金窓口の開設

 上記(1)~(3)の事業に留まらず、被災された霊場の復興には資金が必要となる。そこで、気仙三十三観音霊場復興のための募金窓口の開設を行い、これを管理運営する主体となり得る人を関係各位の中から複数名選ぶ必要がある。寄付金を募るための広報の方法として、大手新聞社、地元新聞社、仏教系の新聞社に取り上げていただくこと、地元出身で活躍されている方にご寄付を依頼することが考えられる。

 また、募金について、一人、一団体からの寄付金の上限を設定するか、HP上のワンクリック募金を導入できるか検討すべきである。



(9)霊場についての情宣活動

(1)気仙三十三観音霊場マップ(2)気仙三十三観音霊場HP(3)気仙三十三観音霊場のガイド本の出版に加え、巡礼の会等旅行会社への働きかけ、また、宗派の広報を通しての檀参の誘い等を行う等が考えられる。

 

 ひとさじの会では、まず、(1)気仙三十三観音霊場マップ作成(2)気仙三十三観音霊場HP作成(3)各霊場の朱印作成の3点について検討し、速やかに実行に移していきたいと考えている。